葉月


季節は夏。

あの子へ書いている手紙は、途中のままになっている。続きを書けないまま、気付けば夏のど真ん中へ放り出されてしまった。

最近は、あまり料理をする気になれない。一汁三菜を心掛けたいけれど、今は到底そんな気分になんてなれないわ、という具合。

楽しいことを見つけたいけれど、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。

私はとてもとても魅力がなくて、それはそれは価値の無い人間だこと。そんな思考に支配されていた。それでもなけなしの強がりで、首を横に振って、私が今まで好きになった人の本当の魅力に、私は1ヶ月や其処らで気付けたことなんてない。色んな話をして、色んな場面を一緒に過ごして、そうやって同じ時間を共有して初めて、本当の魅力に気付いていった。だから私が魅力のない人間なんかじゃなくって、こんな短期間では私の魅力は伝わらないし、私の魅力を見抜けるほどの器じゃなかった、ただそれだけだと言い聞かせた。だけど、魅力も価値も本当は無いんじゃないかって、自分に見つかってしまいそうで怖い。だから、気付かないフリを続ける。私を大切にできるのは、私だけだから。


私は、誰かを愛すことのできる状態がまだ整っていなかったんだと、今思う。それ自体がもう、縁が無かったの一言で済ませて仕舞えるんだよ。


美しい旅をしよう