last kiss

 
街外れにある、小さなフレンチのお店に連れて行ってくれた。ふたりはノンアルコールのスパークリングワインで乾杯した。
 
美味しいフレンチを食べたから
笑みが溢れたんじゃない。
 
切ないねって言葉にしないのは、わざとで、一生の別れを強要しないのは、私もズルイから。気持ちが溢れてこないのは、もうずっと、分かっていたから。
 
夢だと思ってたあなたは、夢なんかじゃなくて、だから私が自分で終わりにしないとダメだった。数え切れないほど交わしたキスもこれで最後。あなたは寂しいと何度も言ったけど、明後日には忘れるよ。撮らなければよかった写真と、美味しいフレンチの記憶を持って、私は旅に出る。貰ったボタン型の抹茶のチョコレートを1枚ずつ味わって食べながら、あなたのことを思い出すんだ。
 
 
涙が、終わりを告げた。