タイムマシンがない

 

月が明るいのか、暗くしても壁に立て掛けたギターのヘッドやルームフレグランスのスティック、昨日届いたばかりの贅沢なテレビがぼうっと浮かび上がっている。せっかく大きくて立派なテレビを買ってもらったのに、テレビのない一人暮らしに慣れてしまったようで、どうも音のある生活がぎこちない。すぐに消してしまう。

窓を少しすかして白くて薄いカーテンを閉めて、電気を消した7畳半の部屋でミツメのタイムマシンを聴いていた。枕と反対側に頭を向けて寝転んで、タオルケットをぐちゃぐちゃのまま素足に掛けて、視界の半分を自分の髪の毛が覆っていた。

少しずつ渇いていくような、じんわり満たされるような、どちらとも言えない感覚。

寝起きの喉の渇きのような、昼寝の間のじっとりとした汗のような、どちらとも言えないんだ。

注射器で血を抜かれるような、水が少しずつ注がれていくような、

 

何か足りないのだけど、心地が良い。